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        よりハッピーになる微笑み空間をつくりましょう!

          既存の構造を生かしてより強い全体性をつくる〜

          〜センタリング・プロセス〜

 

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この度の東北地方太平洋沖地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り

申し上げますとともに、被災されました皆様、またそのご家族の方々に対しまして

心よりお見舞い申し上げます。そして被災地の一日も早い復旧・復興を祈念いたします。

 

巨大地震の津波の高さは10メートルを超え、

浸水面積は400平方キロメートルという山手線内面積の約6.4倍との国交省経由、

国土地理院の概略地の公表がありました。

しばし呆然と言葉も出ず、方丈記の頃と本質的には変わらないが、

それでも、一人でも多くの命を助け、復興に尽力し20日以内に救援住宅着工をと尽力し、

想定外という場合の想定は何か、何を想定して設計するのか、安全基準は何を基準にするのか熟慮し、

津波は想定外で非常用電源を配置していた原発の失敗のようなことも乗り越えて、

より良くと生き歩み続けていることに感動も大きく、

一瞬一瞬の命の輝きのような一生を思います。

日常的に、耐震補強を促し、安全で安心な家づくり、

まちづくりに精を出して参りたいと願いを強く致しております。

 

さて、今回は、東北関東大災害でキャンセルとなったパターン・ランゲージ・アジア支部大会で、

講演予定であった内容をご紹介いたします。主催者側からのリクエストに応え、

1985年から1988年に携わったプロジェクトですが、盈進学園東野高等学校大講堂内装と

本駒込メゾン・ド・ローランからの内容です。これまでのメール・マガジンと重複があるかもしれませんが、

パターン・ランゲージやセンタリング・プロセス、センターとは何か、命があるということはどういうことか、

「普通仏性」と禅にも通じるような既存の全てを出来るだけ生かして全体性を強めていくということを

意識し始めた頃をまとめております。

 

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<既存構造の尊重し強めるセンタリング・プロセス〜〜〜

パタン・ランゲージと幾何学的性質を

意識して生きている構造を生成していくプロセスについて>

1.盈進学園東野高校大講堂内装工事計画




「ここは何をする空間なのか!」

竣工2か月半前の19851月に全体的現場設計のための実験等から

環境構造センターでの私の仕事が始まり

主に大講堂内装設計のための原寸模型と
20分の1の模型や室内展開図でのスタディをチーフの下で進め、

そうしてアレグザンダーとイングリット・キングの来日中の、

現場と現場事務所での設計期間は、かなり集中的でした。

中でも強く記憶しているのは、

しばらくキングとチーフのハイヨ・ナイスが大講堂の内装設計を進めていましたが、

的が外れて命を生むまでには程遠かったようで、

アレグザンダーは、大きな体を飛び上がらせて

「ここは何をする空間なのか?」と言って大きな声がホール中に響きました。

自然と注意はそこへ向かい、二人からの返事が無かったので、

その答えは、「人生の中で重たい意味のある入学式、卒業式を行う。子供から社会人になる卒業式かも・・・」

重たい、しかし晴れやかな荘厳な学園村の精神的中心でもある空間であり建物なのだということでした。

そうして、当方は、生きている全体性ということへ意識し始め、

生きている構造を生成するプロセスとの出会ったのでした。



解り易い例として、写真の赤いV字のラインが角で少し離してあるということの意味についてです。

★柱の各面、柱頭の平面、局面、其々の部分にセンター、命があり、意識の交わりがあり、その角にもセンターがある。

そうした柱全体もその実体として強まり、その確りとした柱に支えられる空間、適度な柱間があり、

ホール、大講堂全体が強まるのです。★

若しも、赤いラインをつなげると、その各センターは消されるように弱まる。平面的になってしまう。

各センターを強めながら、より強い一つの柱という全体性を生成できない幻影のようになってしまうのです。

2.本駒込メゾン・ド・ローラン(1986年9月〜1988年3月)

上記の内装設計・工事監理や、外構や増築棟など東野高等学校の継続的プロジェクトと平行して進めた、

オーナー住宅と事務所付きの
5階建て(5Fはペントハウス、地下駐車場付き)、

壁式鉄筋コンクリート造の16世帯用賃貸マンションです。




<いかに既存の構造を尊重していくか>

ここで、解り易い比較例です。


上図(ハイヨ・ナイス、HN案)は平坦でグリッド区画であれば既存構造を尊重したことになるが、

傾斜地で不定型な敷地では、既存の構造を尊重したとはいえません。

下図(クリストファー・アレグザンダー、CA案)は、既存の構造を最大限に尊重しています。

尊重する度合が決定的に異なることが見て取れます。


次に、重要着目事項のご紹介です。

★既存の構造を意識して最初に着目する項目★

@ メイン・ボリュームについて

A メイン・エントランス

B センターとなるオープン・スペース

C 全てポジティブ・スペース

しかし、こうして、

同じ条件、情報量で進めてもHN案とCA案の違いがあります。

比較して、既存構造の尊重とは何か、明らかとなります。

HN案(上の図):敷地形状との関係薄く、南から陽光も塞ぐ弱い構造で、既存構造も弱める。

CA案(下の図):地形や道と関係する敷地形状をより強める独自の形で、地域全体も強化している。

 

<慣習と常識>

ここで、実際、大変でも、考えさせられることです。

慣習に流されることなく、何が普通なのか、それはどこから何から来ているのか意識することです。

「プロの案ではない」とCA案を一笑したHN。設計施工の安易さ重視で、クライアントに2か月近くCA案を伏せて、CAには中止とする方針を出したHN。それを、クライアントに選択権をと、CA案をプレゼンテーションできるようにする事自体が最も困難であり、HNの心理状態から、その期間が最難関でその後も尾を引くこととなりました。

後で、メリー・ローズ博物館の基本設計開始前に確かめられたことには、

既存の構造、敷地の形、ユーザーの願いを実現する生きている構造を成すことこそ、
プロの仕事、必要ならば発明も、それが創造と
CAの言葉でした。 

同じスタートでも、既存の構造の把握の仕方で、全くその構造の命の質が異なってくる。
(この質の違い、命の強さは、どこかを弱くして得られる強さではない。大講堂柱の例ですね。)

そして、

「既存の構造」を最大限に尊重して、パタン・ランゲージ化。
幾何学的性質も意識して、既存の構造をより強化して、生き生きさせていくプロセスは進みます。

1、全体のボリューム

  ・駒込駅からの商店通り。
   不忍通りのカーブ、近隣商業と坂上の閑静な住居地域の間の準工業地域の近隣の感じ。

  ・5階でも階層性のある立面と平面。1階、1階から3階、

  1階から4階、そして5階の塔屋。→グラデーション

  ・形態上の階層性とパブリックからプライベートへの心理的階層性の一致。
   →メインエントランス、門から玄関、塀、小さな庭、コミュニティ道としての共同廊下、

(1) 戸建規模と馴染む1階の各家
・各家にステップと小さな庭と玄関→玄関のパターン(格子窓、靴入れ、ベンチ、タナ、部屋との関係など)、
小さな庭(アジサイや椿の花の植え込みや、室外機が在ってもその上に植木鉢)


 (2) 半地下にガレージと工房(自然採光と換気)
→1階のレベルが80cm以上道路から高くなり、
歩行者と目線が合わないが目が届くパターン+階層性を高め地域とも馴染む大谷石の塀でつなぎ守る。

   (3)2階の北側にメイン・エントランス
   (目につく、正門としてのスケール、ボリュームのあるスペースで晴れとしての質)

   (4)3階に庇屋根
   →近隣の3階建てや4階建ての建物ボリュームに調和するように合わせている。3.5層の高さ。

   (5)4階のセットバック
   (単に斜線や日影規制からの形ではない既存構造を尊重している全体ボリューム・階層性のため)

   (6)5階の塔屋:ペントハウス

   (7)外壁や屋根
   →1階の大谷石の塀、1階から3階までのテラゾー外壁、エントランス上と3階の瓦屋根、
4階と5階と中庭側の白左官壁、屋上の白い格子手すり。全体ボリュームをより強く生き生きとさせる。

 

2、建物全体はコミュニティで各戸は家

メイン・エントランスからのアプローチと動線 → 

(1)公園のような中庭。

(2)各家のアプローチ:門・庭・玄関

(3)建物内の動線、廊下や階段、EVは、村の道筋のように全体をめぐる。
   自然と顔を合わせて挨拶するヒューマン・コンタクトの生まれる形。
   → 幾何学的性質でもパターンでもある、全てがポジティブ・スペースと一致してどこにも目
     :意識が届き、死角がない。標準階プランも標準プラン、間取りもない。

 

3、各戸が各家

(1)アプローチ
 :1階は道から直接、自分の家だけのステップを上がり、自分の小さな庭脇を通り玄関へ。
  2階以上は、メイン・エントランスから建物内の道を進み、自分の家の門から小さなコンテナ・ガーデン脇を通り玄関扉へ。

(2)各家にメイン・ルーム
 :和室広間を。(元々、クライアントの要望で、庭が見える床の間と押入れがある和室広間があり、それを全ての家に。)

(3)各戸に格子窓からの2面採光を
  窓の佇まい。ガラスの本質。
 →準防火地域なので延焼の恐れのある部分は防火仕様のアルミサッシと障子→和室。その他広くは木製格子建具。


(4)各戸、各家は異なる間取り
 
→不定形の敷地から生成される建物全体との支え合う有機的関係。
 概念的に各戸がわざとらしく異なるのではなく必然性ある意味のある形。

(5)各家の異なる内装の色

  同質でも色が異なる。

 

3、中庭

建物のセンターの一つとして他のパターンに貢献→階層性・各家に2面採光コミュニティの庭。
(クライアントの元々の鯉の池と石庭があり要望から。1階各家との間に板塀。隣地との間は板塀のようなスチール塀。

4、オーナー空間

@5階のペントハウスと屋上庭園。
(元々の暮らしと要望から)それを強化する、
和室・床の間・押入れ・障子・格子窓・縁側・東屋・ベンチ・格子の手すり塀。眺望。

A4階住まいとのつながり:特別階段

B1階事務所と4階や中庭やガレージ・工房とのつながり。

  独特の階層性ある空間。

 

こうしたプロセスをまとめますと、

既存の構造を尊重:

敷地→地形・道・法規

ユーザー参加:要望

地域性:身近な素材や形→大谷石、左官、瓦、畳、赤いトタン屋根・・・

近隣の感じ

パタン・ランゲージ

大・中・小支え合い

幾何学的性質

平面立面において、グラデーション

ポジティブ・スペースレベル・オブ・スケール(メイン・エントランス、中庭、玄関アルコーブ、屋上で塔屋やベンチ・・・)と、
全体性を支えている。

 

生きている構造を生成するプロセス
・既存の構造を見出し、尊重し、より強め、それよりも大きな全体を強め、それよりも小さな部分を強め、
それと同じレベルの隣を強めていくプロセスの繰り返しとなります。
ポイントは、今の普通のやり方が、どのように生まれたか、何が経済性か、常に疑い、ユーザーの真の願いや、地形から生まれる敷地の構造に向き合ってリスペクトすること!です。


こうして生まれる全体性の生命力の強さから、有機体である、自然である私達の生命力と反応し合って、
エネルギーの交流、意識が通う、
ONENESS
、一体感が得られる。
時を超えた質、生き生きとして、のびのびとした穏やかな安らぎ、幸福感、
宇宙が緩むような空間が微笑んでいる感覚が得られるようにと・・・。

 

全体性・生きている構造を生成する
パターンランゲージと幾何学的性質を意識して
センタリング・プロセスを進めていく

大講堂内装で梁のオーナメントを最後に入れた時に、

全体の鼓動が始まり、

食堂棟の入り口とテラスの庇屋根を設けた時、

やはり、全てに命があり、

全体が息づいていると強く感じたのです。

 

そうして、命を強めつなげる行為をずっと続けて行けたら、

ハッピー!!

 

まだ、PowerPointの形跡が残っているようですが、

ここまで、読んで頂きまして、ありがとうございました。

 

最後に、重大発表です。

遂に、電子書籍として「メリー・ローズ博物館」を

214日に出版いたしました。

どうぞ、こちらからご購読を〜♪

http://smilingspace.wook.jp/detail.html?id=209573
 

宜しくお願い申し上げます。

それでは、次回をお楽しみに〜♪


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