************************************************************

よりハッピーになる微笑み空間をつくりましょう!201601

 ☆〜センタリング・プロセス事例紹介・木造戸建て住宅改修〜

*************************************************************

寒中お見舞い申し上げます。

本年も、どうぞ、宜しくお願い申し上げます。

ご無沙汰しております。


春の兆しを感じて、陽光に導かれるように軟らかな土から小さな「芽」が出たなら、

それを愛おしく育てていくように、ぼんやりとした微かに現れつつある

生命現象としての「センター」を見出して、形にして育て始めたならば、

様々な手からその成長を守られて支えられていき、

横に枝を伸ばして他のセンターとつながり、

大樹になって、より小さなセンターをまとめて、

周囲、地域へとその「生きているエネルギー」は波及していく。

この一つの例として、ある昭和30年代の終わりから

練馬区の住宅地を形成した点として在り続けて、

一家の拠り所で在り続けている戸建て住宅の改修例です。

その、地域、道路、庭と建物スケールとバランスが整っているのは、

長年、地域の中で、家族の生活と一体で、

必要に応じて段階的に(三段階で)成長してきた軌跡のためで、

構造的には拙い木造軸組み工法の在り方「おかぐら」でも、

その弱点をカバーし補強する価値が、

その建物の存在力、個性、その建物自体が地域の一角を占めて久しく、

その地域らしさを醸し出しており、

時間を経た重みから大切にしたいと思う気持ちを湧き上がらせて、

唯一無二として在り続ける力を高める可能性を秘めていた。

 この建物を守り続けている熟年ご夫妻の為に、共に、

やがて建物が大樹となる骨格の「芽」は、

いつも自ら清めている家のヘソに立って台所を切り盛りしている奥様が、

「ここはもう一番大事で、これまでと変えて特別な中心に・・・」と

耳に残り続けた言葉に

より爽やかな明るい風を入れたいのだと感じられた。
 

それが、ダイニングの南側の弓形窓の「芽」を導く、

確りとした意志、願いであった。

様々な困難、小さな芽にとっては荒い風雨のように、

劣化度や様々なルールや見積もり調整にさらされて

「ふたりに丁度良い、

木造平屋建ての方が適当かもしれないとも考えている」と逆風もあり、

その風格や味わいや在り続けた唯一無二の「命」を消し去るのも忍びない、

悔しいやら悲しいやらと子供の頃からの記憶が詰まる建物への

ご主人の深い「思い」が
痛いほど伝わり続けた。

 

 このダイニングの南面を形成するボウ・ウインドウ、弓形窓と家の輪郭線、

平面上、立面上の凹凸に調和させて、ボウ・ウインドウの両脇に、

そのセンター、弓形窓を強化する最小幅の縦滑り出し窓を設けて、

大樹の骨格として成長する力を備えた芽、「センター」が見出せて、

それは、建物の急所であり守らなければならない、

構造的弱点の独立柱を視覚的にカバーし、屋外からも屋内からも独立柱の存在を庇い、

矢面に立つ「センターとしての大弓形窓」となって、スケッチに描くことが出来た。

  



  

 骨格は出来たが、建物の外観からの個性、

屋内側のかなり個性の強い天井を持つ東西両側の、和室とつなげ纏められる感じ、

フィーリングを掴むのが、幾度となく繰り返されるフィードバック、

時間をかけてアイデンティティ自体を確かめているご夫妻、

奥様の好みを掴むことにグルグルと廻りながら、

前へと生きているプロセスを進んでいった。

例えば、リリカラの現行の機能を備えた復刻版、ウィリアム・モリスシリーズから、

品格のある薄緑色の、木漏れ日を渡るそよ風のようなウィロー柄は奥様が選択し、

それをスタートとして、連歌のように玄関ホールの光と色合いを配慮して選び、

個性の強い東側居間の天井に合わせて壁紙を選び、

他が更新から明るくなって居間の天井も明るくして全体性を強めるという具合に、

その都度、空間の生命現象、センターが育っていく中、

ご夫妻の気持ちや好みを現場と現物で確かめて、

これまでの様々な気持ちが滲んでくるのを受けながらフィーリングに昇華して、

常に確かめながら住まう人と一体の感じを獲得していった。

そして、自ずと好みの大事にしている家具や

新たに選ばれる家具も空間と一致するものとなった。

    

物心ついた頃から、

絵を描いている時以外は、じっとしているのが苦手であった幼い私が、

落ち着けて心を通わせる茶室や路地からの「侘び」「寂び」が、

木造在来工法の戸建て住宅の耐震改修工事で、しっくりするようになりました。

割れた楽茶碗を金継ぎすることにより、別の次元の価値を生むようになるように。

勿論、耐震補強や設備の更新や、バリアフリーなど、

安全や生活上のニーズに応える目的の上に、

激変ではなく、その存在をより高めて強化するということですが、

正しく、センタリング・プロセスなのでした。

 耐震改修助成の条件、階段が掛かる位置は変えられないなどの

確認申請が必要となるような改築とはならない条件や費用などから

「平屋建ての新築にした方が良いのでは・・・」と。

それでも、子供時代よりの思い出のある住まいからは、

物や空間、場所以上のものであり、

家族との時間、自らとの関係など、

生きているエネルギーそのものを強く感じられる。

 熟年ご夫妻のライフサイクルに合わせて、その住まいの再生が、

その関係自体をより強化することともなる。

子育て、介護と追われた日常生活の中で、数十年間、閉めたことのなかったドアを、

「撤去して処分する」か「新らたに役立てるか」、一つ一つ丁寧に考えると同時に、

心を開いて思いをぶつける時であり、得手不得手を分担し分けて、

互いを尊重し合うのは、山越谷越えと連れ添ったからこそ、

カバーし合いながら、

「貴方の汗の結晶のお金が生かされたのよ」となって、ハッピー!

 耐震補強工事の開始である全体的な補強部分の解体時には、

グラグラで台風や震度3の地震でも心配になる程でしたが、

ご夫妻は勿論、元請施工者の東急ホームズや現場監督、

大工のT氏やM氏など職人方の生きているエネルギーが

間違いなく注がれるように集中するのでした。 

補強計画は、新築のようなすっきりとした生活動線が得られないところもあり、

軸組には長年の歪みや癖があり、

劣化して脆くなった部分を更新しても完璧ではなく、

それは生きているからこそ古美ることが出来る。

古いものを新しいもので覆って隠すのではなくて、

新旧が手をかみ合わせて全体を強化している。「新旧のインターロッキング」である。

骨格である空間構成も薄めることなく、個々の部屋の個性を生かして、

更に、全体的につなげるように関係性を持たせる。

白い天井部分や、床や巾木等によって。

決して、激変して驚かすBefore & Afterではなく、

地域、近隣社会とも仲良く貢献しているご夫妻のように、

個性を損なわず生かしながら、

その住まいも貢献する外観となるように、外観と内観の全体性も強めていく。

 

 
「東側道路を挟んだ向かいの家とシンメトリーに近い外観へ」

 例えば、ダイニングルームの大弓形窓、ボウ・ウインドウと縦滑り出し両袖窓は

初期段階から土から出そうな「芽」として、

空間構造の要であり建物が生きるセンターとして、

空間構成から、外観から、独立柱の存在、

延焼の恐れのない範囲という位置関係から芽生え、

多くの手によって育まれ支えられた存在であった。

まだ、スケッチであった頃、見積調整段階で、大窓の格子はあきらめかけたが、

奥様のひと押しと、東急ホームズからの応援から、

そのセンターが中途半端に弱まることなく、

最大限にセンターとして出現し育っていった。

そのセンターを弱めることなく、カーテンレールは一体にカーブを描いて、

中心から壁の左端へ右端へと振り分けられ、

そのレールのためのカーテンボードについて指示通り、

現場管督が適切に材料を手配し大工が寸法や納まりを理解して施工した。

その大窓のセンターの強さによって、

元請け施工者側がその生み出す価値の可能性を認め、

サッシが嵌って出現し始めると、大工がそのセンターを育てるというように、

内装業者に至るまで、そのセンターを損なうことなく育てることが、

全体を良くすることにつながると自ずと悟って愛情を注がれました。

ダイニングを中心として、左手に居間、右手に和室とつなげるのに、

その視覚から受ける心理的重さもバランスがとれるように

「ローカルシンメトリー 局所的対称性」を生かして。

経済性のために量産品を用いて既存を生かしながら故の「ラフネス」が、

カジュアルな今日の日常性と調和して・・・。

  「表千家 同門会 案内書より」

 ようやく忘れかけていたが堆積していた数十年前の学士論文、

利休の茶室「待庵」や藤井厚二作木造住宅、
聴竹居や

堀口捨巳の茶室研究など、

内的宇宙とその表現が無限につながっていく、

大宇宙が脳の1点に集約され得る感覚が、

.アレグザンダーの「秩序の本質」を通して、

あの「黄瀬戸 井戸茶碗」の地と図を強める歪みと、

または、金継ぎされた茶碗と、

新築よりも格上となり得る、

耐震改修工事を終えてその存在力を強めた住宅がようやく重なりました。

そして、個人としてのアイデンティティも尊重し合う、

お似合いの熟年オシドリ夫妻が、これからも、ずっと暮らし続けて、

由緒を持って次世代に受け継がれるように。

茶室は華奢でも、

長年、手入れを怠らず愛情を注げば、生きているエネルギーを注げば、

古美て価値が増す、また住宅も然り。

そのセンターを育て価値を見出し年代もので格上となるのは欧州の家も然り。

そして均質的ではなく寛容で落ち着く、お仕着せではない良質なスタンダードにより、

地域の奥行が増して、より心地よい環境に。

地震力や経済的圧力や劣化にも対抗して、簡単なことではないが・・・

今年も、微笑み空間をつくりましょう!

亀か、牛歩かと、のろのろしておりますが、

どうぞ、次回をお楽しみに〜♪


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
しています。登録・解除は http://www.mag2.com/m/0000090643.htm からできます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−